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首里散歩 Vol.365 Brave story(ター滝編)

沖縄から梅雨入りの知らせが届く頃、我が家は衣替えの季節を迎える。
夏に向けて、衣類も気持ちも一新。毎日こつこつと始めていたそんなある日…

子供たちのスイムウェアを整理しようと海グッズの収納ボックスを開けると、お尻の部分が擦り切れた2枚の海水パンツを見つけた私は、あの日を思い出し、思わず顔がほころんだ。


「クイナの森」でクー太と出会った帰り、私はその後のスケジュールを考えていた。

すると主人が唐突に言った。
「そう言えば、やんばるに来る途中”ター滝”ってあったじゃん。せっかくここまで来たんだから寄って帰ろうよ!」

これから遅くなった昼食でも…と考えていた私は、正直あ然とした。
でも、これもきっと旅の醍醐味だろうと思い直し、羽地の駅で買ったサータアンダギーを頬張りながら、ター滝へと向かうことにした。

「もう帰り支度してる人ばかりなのに、これからター滝に行くの?無事たどり着けるのかな。」

そんな私の心配をよそに、ライフジャケットとマリンシューズを手に入れた次男と三男は大はしゃぎで駆け出した。まるでゲームのキャラクターに変身したかのよう。

先を歩く人影を追うように、道標のない浅瀬の川を進んでいく。
緩やかな川の流れに瀬音が心地よい。
見上げた空が遠くに感じるほど、生い茂る熱帯雨林は、まさに別世界。

長いことイメージしていた「青い空に青い海」。
私の中の「沖縄」のイメージが覆った瞬間だった。

次第に川は深さを増し、ごつごつとした岩肌が見え隠れしている。
つま先で岩場を慎重に探りながら進んでいる私。

そんな私をよそに、三男は岩肌をすべり台のように
「ひゅー ぱしゃん!」
と何度も滑ってみたり、川沿いの岩場を果敢にもよじ登ってみたり。

新しい遊びを見つけながら、次々とステージをクリアしていく。
「いつも『抱っこ抱っこ』って言うのに、今日は言わないの?」
初めての川遊びに夢中になっている三男に、呆気に取られていた。

しばらくすると、前方へ光が射し込んで、この先にター滝があると予感し、皆の足取りが軽くなる。ファイナルステージクリアまで、あとわずか。

そして-目の前に広がるター滝!

滝つぼからぶわっと吹きつける霧状の風を全身で感じ、大きな達成感と喜びに満たされた。

ター滝の奏でる音色が、まるで鳴り止まないファンファーレのように、私たちの到着を盛大に祝ってくれているよう。

顔に水がつくのも苦手で泳げない次男たけど、三男の犬かきを真似して、自ら岸からター滝の麓へ泳いでチャレンジする。

そして麓から岸へと往復して戻ってきた彼は、
「ター滝、めっちゃサイコー!」と満面の笑みでハイタッチ!
彼もまた一つステージをクリアした。

帰り道、一気に足取りが緩やかになった三男。
「ママ、つかれたよ〜、抱っこ〜。」
力なく歩みよる三男を、私は「よく頑張ったねー!」と喜びいっぱいに抱き上げた。


今年の夏、沖縄へ旅行することが決まった。

ター滝で”勇者の称号”を手に入れたであろう彼らのキラキラ輝く未知なる冒険と、まだ知らない沖縄を―。
私は、ドキドキ、わくわく、ソワソワしながら、心待ちにしている。

ライター
YUKAHA