沖縄では月桃の花が咲きはじめているらしい。

沖縄には聞いたことのない名前の花がたくさんあるが、どれも凛々しくたくましく咲いている。
月桃の花もまた、不思議な形をしていて、白い実のような小さな花がぽつぽつと連なって咲く。
わたしはその花をまだ見たことはないが、花より団子。葉っぱで包んだ餅を、よく食べていた。

『ムーチー』と呼ばれる月桃の葉に包まれた餅の沖縄のおやつがある。
ナイチ(沖縄以外の日本本土のこと)では手に入らないから、沖縄に行ったときは必ず親に買ってもらうことを忘れなかった。
大きな黒いボストンバックいっぱいに、紅いも味と黒とう味をそれぞれ。ナイチに帰ってバックを開けた時の月桃の青々とした香りも好きだった。
少し湿った新聞紙にぐるっと包まれたムーチーを取り出してビニール紐を解いて早速食べる。濃い緑色の長細い葉っぱを右に左に取り外し、真ん中の餅にたどり着くまで剥いで食べる。なんともワイルドなスタイル。
あまりにも食べるのが下手くそだったのでお母さんにコツを教えてもらった。
『餅の部分が見えるまで葉っぱを取って、両端の葉っぱを持ち、餅の後ろの葉っぱを少し押すと餅がひょこっと出てくるんよ。』
すぐにコツを掴むと得意げにたくさん食べた。

葉っぱを腕に結んで腕時計みたいにして、いつでも食べれるようにしてみたり。
この原始的でなんとも食べにくいのが醍醐味。
できたてだったりは葉っぱにべったりと餅が張りついていたりする。
月桃の独特な花草の風味も爽やかで、ほんのり甘い餅も好きだった。
そういえばここ何年も食べてないなあ。
月桃の花も観にいきながら、そろそろ沖縄に帰ろうかと航空チケットを検索しては、カレンダーを眺めながら夏の予定をたて始める。
首里石鹸 池田まお