たしかその日は、台風前日だった。
夕飯を食べた後、歯を磨いていたら、外から「カンカンカン」という音が聞こえてきた。
台風前である。
風が強くて小雨が降っていた。
まさかな?と思ったけれど、また「カンカンカン」と鳴る。さらに「いーやーさーさー」という声が聞こえてきた。
道ジュネーだ。
え?今日やってるの?台風くるけど。
息子と慌ててベランダに出る。それっぽいのが見えた。
うわぁ、やってる。行こう!!!
小雨が降り、風がびゅうびゅう吹く中、息子をかついで道を歩く。
外にはわたしたちのように「道ジュネー?どこ?」と、家から出てきた人が数人いた。
あっちですかね?
あっちから聞こえてくるさーね?
などと言葉を交わしながら、音のする方へ。
すると見つけた。やってた。
本当にやってた!

どれだけ風が吹いても、青年会のみなさんはまっすぐに前を見て、太鼓を打ち、足を上げ、重厚感のある声を響かせていた。
「いぃーやーぁさぁーさぁ」
「あぁーいーやぁー」
うわぁ、かっこいい。
見惚れていると、息子も興奮して「かぜなのに、すごいね!」とぴょんぴょん飛び跳ねる。「ね、かっこいいね」と言いながら、しばらくぼーっと眺めていた。
わたしは道ジュネーが大好きだ。
道々でゲリラ的にはじまる、あの興奮。なぜか見るたびにちょっと泣きそうになる。
度重なる台風でうんざりしていたが、青年会のみなさんが熱気で吹き飛ばしてくれた。

すぐに雨が強くなったので、わたしたちは早々に退散することにしたが、青年会のみなさんは雨にひるむことなく太鼓を鳴らしていた。
背中に太鼓の音と熱気を感じながら、わたしたちは帰路についた。
ライター
三好優実