なぜか動物園=家族の思い出スポットというイメージがある。
実を言うとわたし自身は幼少期、動物園の楽しい思い出はなく、大人になってから動物園を好きになった。なのに「動物園は子どもが好きな場所」だと思っているから不思議である。
イメージに突き動かされるように、息子が生まれてからは年に一度は動物園に行くと決めている。先日も数日前に動物園行きを決め、前日には「なんと明日は動物園!」「キリンさんいるかな?ゾウさんいるかな?」と息子に話しかけた。
1年ぶりの動物園は、なにやら動物以外にも子どもが楽しめるスポットが充実していた。その日たまたまフードフェスが開催されていたため、広い芝生の真ん中でピクニック気分が楽しめたし、さらにそのすぐ近くでは水遊びができるスポットがいつの間にか誕生していた。
水遊び好きの息子は大喜びである。
水遊びを1時間強楽しんだ後、順路を進むと今度はなにやらワンダーミュージアムなるものがある。中には光る椅子やピタゴラスイッチ風装置、化学の不思議的な装置などがあり、これまた子どもが大好きそうな遊びだらけだ。
もちろん息子はこちらも興味津々である。
それなりに遊び尽くしてミュージアムを出る頃には、すでに入園から3時間が経っていた。
夫とわたしは「さあ前座が長くなりましたが、それでは動物を見に行きましょう!」という気持ちで前進する。が、息子の反応がいいのはジュースや木でできたツリーハウスもどき、アンパンマンの乗り物など、動物以外。
なんとか動物への興味を持たせようと
「ライオンさん大きいね!」「ほら、カワウソ!こっち見てるね、かわいいね」などと声をかけるが、もはやちょっと眠そうだ。
最後、メインディッシュともいえるキリンやゾウを前にしても、息子は「ふーん」顔。親ふたりもへとへとだったため、キリンやゾウには申し訳ないが「これでやっと帰れる…」という気持ちになった。
動物園…と思う。動物園なのにほとんど動物を楽しまなくてごめんなさい。
帰りながら、水遊びは最後がよかったかも、ワンダーミュージアムはスルーでよかったかもしれないなどと後悔がよぎりはじめた。
だけど車に乗った瞬間ころっと寝た息子を見て、今日はこれでよかったんだと思う。わたしたちは最初から、動物を見にというより息子のよろこぶ顔を見にきたのだから。
今日はこの感じがベストだった。
そして次も、また違うベストを探せばいい。次に来た時も同じことをして楽しむかもしれないし、次こそは動物を楽しむかもしれない。どちらにしてもわたしたちは、目の前で笑う息子を楽しめばいいのだ。動物園はきっとそういうところだ。
ライター
三好優実