ちょっとした夏休みに、夫の実家に帰省した。
夫の実家は静岡の田舎町にあり、ゆたかな自然の中、義父母がふたりで暮らしている。家には縁側も畑もあり、のどかでゆたかな佇まいはわたしにとって理想の「おじいちゃんおばあちゃんの家」。だから毎年、家族で帰省するのがとても楽しみなのだ。
今年は着いた瞬間、驚いた。家の真ん中に、大きな太鼓があるのだ。さらに本場顔負けのエイサー衣装も用意されている。
息子がエイサーにハマっていると伝えていたため、なんと沖縄から発注してくれていたらしい。沖縄から静岡にきたのに、我が家よりもよっぽど沖縄だった。
一軒家なので、朝から晩まで太鼓を叩いても近所迷惑にならない。息子は飽きずに1日中バチを握り続け、家じゅうに太鼓の音を響かせた。その音をジージ―とバーバーは飽きずに喜び、わたしはその様子がうれしかった。
翌日はジージーに案内され、畑へ。畑でふたたび驚いた。大きな鯉のぼりが空を泳いでいたのだ。ジージ―が朝からせっせと揚げてくれたらしい。
「7月に鯉のぼりかって、近所の人に笑われちゃったよ」と言いながらも、そんなことはお構いなしだという顔で満足そうに笑っている。汗だくだ。息子はバサバサと揺れる鯉のぼりを見て「おお~~」「ともり、ともり~」と興奮した。(息子語録:ともり=鯉のぼり)
さらに畑を進むと、ジージ―が息子に「あれを見てごらん」と声をかける。目の前に大きなスイカがごろんと転がっていた。息子は「スイカマン!」「スイカマン!」と大喜びだ。
7月にこんな大きなスイカができるんだなぁと感心していると、「実はよそで買ったものを仕込んでおきました」と義父が小声で教えてくれた。
静岡であることをあっさりスルーしてエイサー環境をつくり、季節外れの鯉のぼりを揚げ、畑にスイカを偽装する。そんな義父の心意気はなんて温かいんだろうと思いながら、そういえば夫にもこういうところがあるなと思う。
ふと、息子がいつかお父さんになったら、夫に鯉のぼりを揚げてもらおうと思いつく。わたしが揚げたっていい。きっとこういうのは遺伝じゃなくて、うれしい気もちがその人に浸透して受け継がれるのだ。だからわたしも受け継いで、そうやってこの温かさをつないでいければいいな。
ライター
三好優実
★エイサーが登場する過去記事はこちら⇒Vol.268 2歳の誕生日プレゼント
★スイカが登場する過去記事はこちら⇒Vol.277 スイカマンの冒険
★こいのぼりが登場する過去記事はこちら⇒Vol.266 ともりの期間