「今回の台風はめちゃくちゃでかいよ。」
ほぼ毎年聞く台詞だ。ボジョレーヌーヴォーの「今年は当たり」と同じくらい。正直油断してた。
台風前日、うちなんちゅの友人から「今回は本当の本当にやばい」と念押しされ、幼児がいるから一応やっとくか、と万全の対策を練ったのが本当によかった。
今回はでかかった。かなり。
我が家はまだマシだったものの、それでも2度停電し、2度目の停電時にちょうどシャワーを浴びていてえらい目にあった。北部に住む友人は数日間停電したらしく、オンシーズンで割高のホテルに連泊する羽目になったらしい。なんてこと。
台風が去った後、荒れた道を眺めながら車を走らせると、見慣れた大木が根元からなぎ倒されている姿を目撃した。
こんなでかい木が、こんな根元から折れるのか。風で。
風の威力にゾッとしつつ、隣の細くて小さい木がしゃんと立っていることにまた驚く。
異様だ。だけどこういう光景をみるといつも、人生だよな、とか思う。ちょっとした角度とか、ちょっとした位置とか、多分そういうので運命は大きく変わってしまうのだ。
運転する夫に「あの光景は人生の縮図だね」と分かったようなことを言ってみると、夫は「たしかに。目立つ方が風当たりが強い的な」と言った。おお、そういう見方もあるのか。うまい!
人生の世知辛さを感じた後、徒歩10秒の公園に行くと、ガジュマルが何事もなかったように力強く生き延びていた。こっちは神秘か。
神に守られたのか、それとも細い枝の集合体だからか、はたまた位置がよかったか。何にせよ、風当たりが強くとも生き延びることはできるのだ。私はガジュマルを見上げ、もう一度「人生だなぁ」と呟いた。
ライター
三好優実