保活をしている。
子をあずける保育園を探す活動、略して保活は、出不精の私にはちょうどいい散歩のきっかけになっている。
出るまでは腰が重くとも、一歩外に出るとめちゃくちゃたのしい。抱っこひもで息子を揺らしながら、歌ったり天気や木々について語りかけて歩くのは新鮮でもある。心なしか息子もたのしそうだ。
ふと、息子に「みてみて〜」というためのアイテムを探していると、ものすごいピンク色の並木道をみつけた。みつけた瞬間「みてみて〜」を忘れ、立ち止まる。これは、と思った。
沖縄に住みはじめて約10年。毎年、秋が来るたびに思うことがあった。
紅葉がなくてさみしい。
赤々とした華やかな光景と、きゅっと肌に痛みを感じる、だけど耐えられる程度の寒さ。あの感じが大好きだったので、紅葉がない、というのは沖縄の数少ない欠点であり、わりと大きな欠点だよなと思っていた。
だけどふと目にしたピンク色の並木道をみて思う。もしかしてこれ、沖縄版紅葉でいいのでは。
いちばんに目についたのは、ピンクと赤のあいだくらいの鮮やかな赤。本物の桃に限りなくちかい色の桃色もあり、すこし色褪せたベージュ色もある。
とくに気に入ったのは、ベージュ色の沖縄版紅葉。折り紙の紙風船やかわいいおばあちゃんみたいに、太陽の光をやさしく包み込んでいる感じがして、とてもよかった。「おやおや、今日も太陽さんは元気だねぇ」と聞こえてきそうだ。
沖縄版紅葉はこれくらいがいいんだよな、と思う。なにせ沖縄にとって秋は、冬への通過点ではない。暑さがどこかでぶり返してくる前提の、いわば小休憩なのだ。だから県外の紅葉みたいに、あんなにも明媚じゃなくていいと私は思う。
いいなぁ、この道。そう思ってしばし立ち尽くしていると、足元にぼとり、と沖縄版紅葉が落ちた。
その姿が、沖縄版桜(緋寒桜)の散り方に似ていて、やっぱり!と思う。緋寒桜もぼとり、と落ちるのだ。ほらね、もうこれは沖縄版紅葉でいいでしょう。
ところどころ黄色く染まった葉の部分も、紅葉感をさらに引き立てている。
調べてみると、この樹は「タイワンモクゲンジ」という樹らしい。そして花だと思っていたピンクやらベージュ色のものは、どうやら果皮だそうだ。
タイワンモクゲンジ、という名前にも敬意をはらいつつ、わたしはこの樹をどうにかして沖縄版紅葉として広めたい。出不精かつ育児奮闘中の私に、「季節は動いているよ」と言わんばかりに、秋を知らせてくれたのだから。
ライター
三好優実