小さいころから食べることが大好きだったわたし。
そんなわたしが、特に楽しみにしていたのが “お弁当”でした。
遠足や運動会などの大きな行事から、海に行くときのおにぎり弁当や、仕事の父に届けるための3色弁当など、母が食器棚からお弁当箱を取りだすたびに、「やったー!」と叫び、何度も母の手元を覗き込んでは、出来あがっていくお弁当にワクワクしていました。
そして、そんな子供の頃に感じていたワクワクを思い出させてくれたのが、今回の晴れ時々、首里で取材させていただいた「お弁当屋ペッコペッコ」さん。


店主の眞野 晴海(まの はるみ)さんの、“作るからには美味しく、身体に良いものを。”という想いが込められたお弁当たちは、県産・国産野菜を使い、色鮮やかで種類も多く、どれを食べても「美味しいぃ~!」と口にすると共に、つい笑みがこぼれてしまいます。

写真 左:眞野 泉(まの いずみ)さん
写真 右:眞野 晴海(まの はるみ)さん
※以下「晴海さん」「泉さん」と称する。

そんな美味しいお弁当屋さんをここ沖縄県糸満市の地で営む晴海さんは、元は東京都出身。
これから先の進路に迷っていた20歳の頃、「上下関係が厳しい世界で、自分自身を鍛え直したい。」との思いを胸に、日本料理の道へと飛び込みます。
何もわからないことだらけの世界で、お店の下宿先で寝泊まりしながら、必死に学び続けました。

写真:中央に写っているのが、晴海さん
そして、お仕事にも慣れ、すこし気持ちにも余裕が出てきた頃、沖縄県糸満市出身の奥様 泉(いずみ)さんと出会い、ご結婚後沖縄へと移住。今ではお子様にも恵まれ、日々の暮らしの中で、『 沖縄で暮らす良さ 』を感じているのだそう。
晴海さん 東京で生活している時って、自分だけの世界はイヤホンで音楽を聴いている時だけだと感じていました。自然を感じに行きたいと思っても、結局は人が多い駅を経由しないといけなかったので、どこかに行きたい気持ちよりも、人混みに出たくない気持ちの方が強かったですね。
それに比べて今は、歩いて海にもいけるので、たまに一人で散歩しつつ海をボーっと眺めに行ったり、近所の何の変哲もない道で空を見上げて、どこかの家のラジオや三線(さんしん)の音に耳を傾けたりと、ひとりはひとりなんだけど、暮らしがある音を感じられて、、そういう毎日の暮らしの中で気持ちをリセットできる環境があるって良いな。自分に合っているんだな。と感じています。

元々超インドア派と話す晴海さん。逆に奥さんの泉さんはアクティブ派で、「夫婦でタイプが全く違います(笑)。」と仰っていました。
そんな晴海さんですが、実は沖縄に移住してから10年ほどは県内のリゾートホテルで働いていました。
ある日、奥様の泉さんから南城市にあるお弁当屋『ヒナタキッチン』のことを聞き、お弁当を食べてファンになり、それが今のお店を開くキッカケになったのだそう。
晴海さん それまでは、いつか自分でお店を開くなら、和食が食べられる定食屋かな…?なんて考えていましたが、沖縄に引っ越してきて、沖縄の “ お弁当文化 ” がこんなに根強くあるんだと驚きました。
さらに、南城市のヒナタキッチンさんに出会い、
「こういうお弁当屋さんをやってみたいなぁ…。」と思ったことがキッカケで、今のお店の実現に動き始めました。

晴海さん 縁あって、ヒナタキッチンさんからメッセージカード(※写真)をいただけて、今でも大切にしています。
晴海さん 料理の世界に入った時から、大変なことばかりなのは知っていて、覚悟もしていましたが、それでもいざお店を開くとなると、物件探しから、お店の内装工事、お弁当の試作など、自分が想像していたこと以上に大変なことも多かったですね…。
お店がオープンしてからは、自分でなんでも決められるからこそ、あれもこれもと仕事を詰め込みすぎてしまい、結果、早朝から働き出して、家に帰るのは深夜、なんてこともざらにありました。
妻(泉さん)にもずいぶんと心配されましたし、自分でもこの働き方だと、長く続けていくのは難しいと思い、そこから調整を重ねて、今の営業形態に落ち着きました。

写真:真剣な眼差しでお弁当の盛り付けをする晴海さん。

ペッコペッコさんでは、「オードブル」と「ココモリ(ご予約のお弁当)」も販売しております。(※どちらも1週間前までに要予約)
そんな様々な大変さに揉まれつつも、2023年10月、ついに念願かなって「お弁当屋ペッコペッコ」を糸満市西崎にオープン。当初は、お客さんが来てくれるだろうかと不安もあったそうですが、今では開店前から並ぶ人気店になりました。

写真:お弁当は連日大人気。取材日もオープン(11:30)と同時にお客様がご来店し、あっという間に売り切れてしまいました。

晴海さん ありがたいことに、連日沢山のお客さんがお弁当を買いに来てくれています。暑い中、並んで待ってくれて、中には「美味しくて、また買いに来ました!」だったり、「今日はデザートも絶対買いたくて早めに来ました!」などと声をかけてくれる方もいます。
夫婦2人でやっているため、中々お客様としっかり話すことは出来ないのですが、それでも声をかけていただくたび、嬉しいです。次の日の仕込みをしている時に、夫婦で「こんなこと言ってもらったよ。」と話したりして、喜び合っていますね(笑)。


晴海さん また、僕たちのお弁当に使う食材は、出来るだけ“県産・国産”を使うようにしています。
昨今、そういうものは、“ 高い ”と言われがちですが、国内の農家さんが愛情込めて作ったお野菜って、全然違うんです。鮮度もそうだし、なにより調理したときの味も段違いだと感じます。なので、そういう農家さんを応援する意味でも、使い続けたいと思っています。
いつか、僕たちのお弁当を食べて育った子がお母さんになって、「ここは、ママが子どもの頃から通ってるお弁当屋さんなんだよ。」と、話しながら、自分の子どもを連れて来てくれる。そんなお店になれたらすごく嬉しいなと思っています。

写真:今日出すお弁当の仕上げをしつつ、最終チェックを行う晴海さんと泉さん。
そんな大人気の「お弁当屋ペッコペッコ」を営む眞野さんご夫婦。
そんなお二人に、今までも、そしてこれからも “ 大切にしていきたい ” と思うことについてお聞きしたところ、こう返してくださいました。
晴海さん 今まで、自分たちが 『 食べたいなぁ。』と思ったものをカタチにして提供していますが、それはこれからも変わらないかなと思います。それが自分の一番自然な感情な気がしますし。
泉さん (優しく頷く)
晴海さん それともう一つは、“ 選べる楽しみ ” を作る事ですかね。
子供の頃って、日々色んな刺激や好奇心があって、ワクワクって色々なところに転がっていたと思うんですけど、大人になると減っていっちゃった気がして…。
なので、お弁当の種類だったり、色んな味付けの副菜だったり、『 今日は何があるかな?』『 何を食べようかな?』っていう、日々の中でのちょっとした“ ワクワクする気持ち ”を、感じてもらえたらなぁ。っていう気持ちで、毎日お弁当作りに励んでいますね。
「孤独のグルメの松重 豊さんのように、『 今日何を食べよう? 』って考えるのって、本来とても楽しいものだと思うんです。そういう、“食にワクワクする気持ち”を、いつまでも忘れないでほしいなって思います。」と話す晴海さんと、そんな晴海さんの言葉に耳を傾けながら、優しく頷く泉さん。
言葉で伝えるのは苦手と仰りつつも、ご自身の気持ちを確認しながら、しっくりする言葉を探し、真っ直ぐに気持ちをお話しされるお姿に、一本芯の通った心持ちと、ご自身の作るものに対する強い信念を感じました。
“ 選ぶ楽しみ ” そして “ 食べる楽しみ ”
「食」を通して、自分が選ぶものの大切さを教えてくれたペッコペッコさんの『 お弁当 』を、是非とも味わってみていただきたいです。

首里石鹸 中里 ゆきこ
【お弁当屋ペッコペッコ】
■DATA:〒901-0306 沖縄県糸満市西崎町3丁目19
■営業時間:11:30 ~ ※売切れ次第終了。
※事前予約、お取り置きは致しておりません。
※お支払いは現金のみとなります。
■定休日:月・木曜日
※詳細は公式Instagramにてご確認ください。
■駐車場:無し
🌸公式インスタグラムはこちら
― 取材後記 ―
取材終わりに、「沖縄の野菜ってどんな特徴があると思いますか?」と何気なくお聞きした所、奥様の泉さんから「なんか、そこいらの台風には負けない。じゃないけど、生命力が強い気がします。」と言われ、思わず納得してしまいました(笑)。厳しい環境下で育つ野菜は栄養をたくさん取り込み、逃さないようにするため美味しいと聞きますが、ペッコペッコさんのお弁当には、素材の美味しさを生かしつつ、食べるたびに嬉しい驚きが詰まっていると感じました♪
さらに、泉さんが作るデザートの「波照間産 黒糖プリン」は、暑い夏でもするんといけちゃう優しい甘さ。一口食べて、「もう1個買っておけばよかった!」と思うほど美味しかったです。いつもあるとは限らないため、見つけた際はぜひ食べてみてくださいね♪

首里石鹸 公式YouTubeにて
「晴れ時々、首里」の動画も絶賛配信中です!
公式YouTubeでは、普段見られないお弁当を盛り付けるシーンや、晴海さんのインタビューの様子など、彩り豊かなお弁当と共にご紹介させて頂いております♪ぜひ、Youtubeショートも合わせてご視聴いただけますと嬉しいです♪