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首里散歩 Vol.372 変わらないもの 変わりゆくもの

長男は、思春期真っ只中の受験生。
返ってくる言葉は、ほとんどが一言。
もしくは、返事の代わりに足で床をドンドンと鳴らす合図が送られてくる。

意思の疎通は取れているような、取れていないような——。
時々、わからなくなる。

けれども、私が感じている以上に、彼の心の中にはもっとモヤモヤとした気持ちが渦巻いているのかもしれない。

そんな長男が、先日15歳の誕生日を迎えた。
食卓の時間もすれ違いがちになってきたけれど、誕生日だけは、家族みんなでお祝いすると決めている。

そのお祝いの最中、不意に彼が話しはじめた。
「国語の授業でね、『◯◯を知っているか』っていう課題があって。首里城について調べたんだ。」

珍しく、学校の話をしてくれた。

いくつもある選択肢の中から、「沖縄」を選んでくれたことが、何よりうれしかった。

どんなことを調べたのか尋ねると、楽しそうに話し続けてくれる。
首里城の話で会話が弾み、しばらくの間、久しぶりにゆったりとした団らんの時間を過ごす。

「ねぇ、瑞泉門の“瑞泉”って、どういう意味か知ってる?」

「“立派な、めでたい泉”って意味でしょ。龍の口から湧き水が出てる『龍樋』にちなんで、瑞泉門って名付けられたんだって。」

すごい。しっかり調べてる。
まだうまく数も数えられなかった頃、正殿の龍を何度も何度も数え直していた姿が、ふと脳裏に浮かんだ。

「お母さんも、一緒に首里城について調べてみたかったな」
——なんて、何気なく言ってみると…

「一人で、納得するまで調べてみたいじゃん。」

小学1年生の頃、作文がうまく書けなくて泣いていた彼は、もうここにはいなかった。

いつまでも子どもだと思っていたのに、いつの間にか彼は、大人への階段を着実に上っている。

その成長がうれしくて、そして少しさみしくて——。
いろんな思い出が、走馬灯のように頭の中を駆け巡る。

彼が5歳のとき。
親友の結婚式に招かれて、ふたりで訪れた宮古島が「はじめての沖縄」だった。

初めて見た、さとうきび畑。
車を停めて、さとうきびと背くらべをした日。

砂山ビーチへ向かう砂道を、手をつないで駆け抜けた日。
沈む夕日を、ふたりで追いかけた日。

シーサー作り体験では、小さな手で、力強くシーサーの爪を刻んでいた。

・ ・ ・

あれから、10年。
一緒に見てきた「沖縄」は、大きくなった今も、彼の心の中で息づいている。

彼なりに沖縄を思う気持ちは、きっと今も変わらない。
変わらないもの。変わりゆくもの。

「子どもは親の背を見て育つ」と言うけれど、
今はもう——
私が、彼の背中を見守るときなのかもしれない。

これから、大きく羽ばたいていく君へ。
心から、幸せを願って。

15歳の誕生日、おめでとう。

ライター
YUKAHA