ある日、自宅に届いた小包。
南の島の風をまとってやってきたそれは、母からのおすそ分けでした。

沖縄に住んでいた頃、よく食べた思い出の味──「琉球だんご」。
何かあるたびに。いや、何もなくても。
母はいつも、買ってきてくれていました。
そのお店が閉店すると知り、なんだか少し切ない気持ちに。
4月に帰省したときも、買おうか迷って、
「また今度でいいか」と、後回しにしてしまった私。
だからこそ、母の「買えたら送るね〜?」の言葉が、じんわり胸に沁みたのです。
その3日後。届いた小さな箱の中には、
あの懐かしい団子が、ちゃんと入っていました。


夫とふたりで頬張る、最後の思い出の味。
白くて、やわらかなお団子に、彼は「なにこれ、爽やか…!」と目を丸くして。
「ゆずかな?なんだろ?」
「これはね、シークヮーサーだよ」
そう伝えると、「沖縄らしいね〜」と、にっこり笑ってくれました。
私の中にある家族の思い出が、
彼の中にも、やさしく刻まれていく。
気づけば私も、母のように誰かを想う気持ちを大切にしたくなっていて…
「母に何か送ろうかな」
そんなふうに思いながら、神戸の街を歩く休日が、とても楽しいのです。

こんなふうに、誰かを想うことを、自然にできるお母さんに。
私も、なれたらいいな。
首里石鹸 井口ひかり