仕事の帰り道
緑まじり始めた桜の樹が、私に言った。
『少し ゆっくりしていきなー』
そう聞こえた。

ここ最近、名のない「せわしなさ」や、子供たちの卒業式や入学式、新年度と目まぐるしく過ごし、気づかぬ間に気をはっていたのだろう。
ちょうど少し立ち止まりたかった。
飲み物とパンをふらりと買って、お花見で賑わう広場から少し離れた桜の樹の下をかり腰かけた。
『あー、久しぶりやな、目的地でない場所にいるの』
淡いピンクに包まれながら、暖かな風がよこぎる。
周りの時間がゆったりと流れていくのを感じる。
この感じ
なんだか懐かしい。
「ゆったりとした時間」
沖縄で感じていた この感じ。
忘れかけていた感覚が蘇ってくる。

青い空 公園で 「あっ!魚だ!」と、娘が指さした先には今にも手が届きそうな白い雲。
ソフトクリームに、わたあめ、龍
いろいろな素敵なモノに似た雲をみつけては
ただただ、見あげた。

家路の小道からは、誰かの奏でる三線の音色。
そして子供たちの舞踊の稽古の気配。
日陰をつくる、大きな葉の樹も、「ゆったり」と潮風をかわしていた。

『そういえば、沖縄でみた桜は、青い空に ピンクがくっきりと 綺麗やったな。』
そんな思いにふけるうちに、心に絡まっていた何かが、スルスルとほどけていった。
・
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小さな子が 無邪気に走る。
手をつなぎ寄り添うカップルがいる。
家族で集まり写真を撮っている。
私の知らない人たちの幸せそうな姿に、微笑ましくなっている自分がいた。
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『ゆったりとした時間、心に余裕』
そうだ、最近これが足りなかったのだ。
花びら散り始めた桜の木の下。
思い出したよ。
ありがとうねー
あの日 あの時 沖縄タイム。
ライター
パッチンくるり