『さて、明日はどこへおでかけしたいですか?』
私はおもちゃのマイクを持ち、子どもたちにインタビューをした。子どもたちの回答はそれぞれユニークだったが、生き物に興味を持ち始めた三男から
『沖縄にしかいない動物に会いたいな!』
とリクエストをもらった。
沖縄にしか生息していない生き物を調べてみると、イリオモテヤマネコにヤンバルクイナ、ノグチゲラにオキナワトゲネズミ。聞いたことのある生き物もいれば、初耳の生き物も。
ただどれも希少で、絶滅危惧種あるいはそれに近い生きものが多いことに気づく。
実は私も会いたかったのが、ヤンバルクイナ!
いつもより足を延ばして、本島北部に位置する「クイナの森」へ。


カーブだらけの山道に入ると、「ロードキル/ヤンバルクイナ飛び出し注意!」の標識があちらこちらに目に入る。
野生のヤンバルクイナに会いたい反面、
『ひいてしまったら、かわいそうだよ!森から出てこないでね!』
と、子供たちはヤンバルクイナの命を気遣い、道路の端を気にしながら、ゆっくりと車を走らせた。
どこからともなく青く光る煌びやかなトンボがやってきて、ヤンバルクイナのクー太のもとへ道案内をしてくれた。


『ねぇ、どうして1わしかいないの?さみしくないのかな。』
三男は動物園を想像していたようで不思議そうな顔をした。
ヤンバルクイナは攻撃的な鳥で、蹴り合ったり追いかけたりして縄張り争いをするため、1わのみ展示しています。と施設の方が教えてくれた。
『はーちゃんとお兄ちゃんが、お風呂の場所取りで喧嘩してる時と似ているね。』
と話しかけると、三男は小さく頷き、水浴びしているクー太をじっと見つめていた。
早朝や夕方になると、森にいるクイナと”キョキョキョキョキョー””ケケケケケ”と鳴き交わしているそう。
『本当はさみしいのかな?ぼくもお兄ちゃんがいないとさみしいから。』
と、クー太の心に寄り添う優しく素直な三男がとても愛おしかった。
その日は暑くバテ気味だと言うクー太は、おうちに帰ってからなかなか姿を見せてくれない。
そこで、施設の方がクー太の大好物であるミミズを少しずつ与えながら、私たちの近くへと誘い出してくれた。

そんなクー太を見て、
『僕も大好きなグミとチョコくれたら、ママのお願い聞いちゃうよ!』
と意気込む三男は、まるでクー太を自分に見立てているかのようだ。
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それからというもの、お風呂の場所取りは自然となくなり、順番制になった。
そして、おやつを食べたあとのおかたづけも、きちんと出来るようになった。
三男はクー太と出会って、大切な何かを学んだのかもしれない。

ライター
YUKAHA