私が沖縄から本州に引っ越して、早くも2年。
だいぶ慣れてきたものの、いまだに沖縄と本州の違いにカルチャーショックを感じる瞬間がある。
今回は、そのひとつを紹介したい。
…
「おにぎり温めますか?」
この問いかけが沖縄特有のものだと、子どもの頃にテレビで知った。沖縄では当たり前のことなのに、本州では違うと知ったときは衝撃を受けたものだ。

▲「今、あいてます!」「ユニオンですから♪」のCMでおなじみの、沖縄県民に愛されるご当地スーパーマーケット「フレッシュプラザ ユニオン」のおにぎり。
関西に引っ越してすぐの頃、試してみようとドキドキしながらおにぎりをレジに持っていった。
案の定、「温めますか?」とは聞かれない。
『あの話、本当だったんだ!』
テレビで見たことが現実だったと知って感動したものの、どこか寂しい気持ちもあったのを覚えている。だが、温かいおにぎりが当たり前だった私も、冷たいおにぎりの美味しさに気づくことができた。これは新発見だった。

しばらく経ち、冬に沖縄へ帰省した。
2時間弱のフライトを終えた空港で、空腹に耐えきれず、コンビニに立ち寄る。何気なくおにぎりを手に取り、レジに通す。すると、店員さんが「おにぎり温めますか?」と尋ねてくれた。
その一言だけで、『ああ、帰ってきたなぁ。』と感じた。
温めてもらった“あちこーこー”のおにぎりは、沖縄の肌寒い冬にじんわりと染み渡る美味しさだった。
沖縄は本州に比べて高温多湿なため、食事を温かいうちに食べる文化がある。その中で、お客さんの提案から“おにぎりを温める”という風習が生まれたそうだ。
私は、“おにぎりを10秒温める”というひと手間の中に、沖縄の人情を感じる。
当たり前だと思っていたことが、実は当たり前ではなかったと気づいたとき、心がじんわり温かくなった。
これは、県外に出たからこそ気づけたカルチャーショックのひとつ。でも、この経験を通して、ますます地元・沖縄が好きになった。

沖縄に旅行で来て、『コンビニのおにぎりを食べよう!』とはなかなか思わないかもしれない。
でも、せっかく訪れたなら、おにぎりとともに沖縄の人情の温かさに触れてみてほしい。
首里石鹸 井口ひかり
《追伸》ちなみに、沖縄のコンビニで働いていた友人によると、明太子やいくらなどは温めるか聞かないそう。
それでも「温めてほしい。」と言えば応じてくれるらしい。これもまた、人情。