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晴れ時々、首里 Vol.32 香りでうみだす「笑顔」と「想い」

少し柔らかな色合いの青空に、時折拭く風が気持ちいい。

そんな12月のある日、恩納村にある「株式会社いいにおい」さんのラボにお邪魔させていただいた。

「わざわざ遠い所まで、足を運んでいただき、ありがとうございます!」と笑顔で迎え入れてくれた山城 遥奈(やましろ はるな)さんは、代表取締役社長であり、調香師でもある。

“香りは見えないが忘れがたい”をコンセプトに、香りで心動かす体験をご提供したいと、お客様ひとりひとりに寄り添いながら、誰かの心に残る「いい香り」を生み出すために、日々励まれている。

写真:山城 遥奈(やましろ はるな)さん。

※以下「遥奈さん」と称する。

そんな遥奈さんと首里石鹸との出会いは、やはり「香り」だった。

遥奈さん いま首里石鹸様で導入いただいている店舗の香りが、シークヮーサーのハンドソープ※1 の“泡の香り”を模して制作した香りになっているのですが、これは緒方さん※2 のご希望の香りでした。“泡の香り”というご指定をいただいた際に、こんなに沢山の商品があるなかで、ひとつひとつ細かい所までしっかりと把握されているんだなという驚きと、商品へのこだわりや愛を感じました。それと同時に、香りを再現する難しさもありましたが、今では店舗で皆さまに香っていただけていますし、何より「いい香り」というお声を頂けるようになったので、本当によかったです!


※1 Aroma is LIFE フェイス&ハンドボタニカルリッチフォームソープ+(シークヮーサーの香り)
※2 緒方 教介(おがた きょうすけ)首里石鹸の店主&代表取締役社長

「香りは見えないアート」とも話す遥奈さん。
だからこそ、単純な「香り」だけでなく、その背景に結びつく“気持ち”や“記憶”を大切にしたいと言う。

遥奈さん 香りってすごくその時の気持ちや記憶と結びついているなって感じませんか?例えば、海の香りを感じると、幼少期に家族で海に遊びに行った事を思い出したり…。

私の事で例えるなら、月橘(ゲッキツ)の花の香りを感じると“夏もいいな”と感じるんです。沖縄で生まれ育ったのですが、実は季節の中で夏が一番苦手で…(笑)。でも、この香りを感じると、夏もそう悪くないかも。って思えるんです。そういう気持ちの変化にも、実は香りって密接に関係しているんですよ。

写真:月橘(ゲッキツ)の花。花は香り高く、別名「シルクジャスミン」とも呼ばれている。

普段の生活の中でもそうして「香り」を通して季節を感じたり、気持ちの切り替えをしたりするという遥奈さん。そんな遥奈さんが「香り」を意識するようになったのには幼少期の思い出が結びついていると言う。

遥奈さん 山原(やんばる)※3 におばあが住んでいるんですが、この家の庭にシークワーサーの木が植えられていて、時期になるとたくさん実がなるんです。その時に初めて嗅いだシークワーサーの香りをきっかけに、“いいにおい”とか、“いい香り”というものを意識するようになりました。

※3 山原(やんばる):沖縄県沖縄本島北部の山や森林など自然が多く残っている地域のこと。

写真:「香り」を意識するようになった幼少期。

そうして小さなころから「香り」を意識するようになった遥奈さんだが、意外なことに初めから調香師を目指していたわけではないという。

遥奈さん 実は以前はバスガイドとして働いていました。出身地の異なるお客様とお話しができたり、夏には北海道の礼文島にバスガイド※4として行かせてもらったりと、色んな経験をさせていただきました。その中で、香りで印象を聞かせてくれる方が多かったんです。例えば、「ここのホテル、凄くいい香りだったわよ。」とか、「素敵なお風呂で、香りまでよかったわ。」など。そうしたお声を聞いているうちに、香りってすごく印象に残るんだな…。香りでのおもてなしという方法もあるんだな…。と、意識するようになりました。

※4 沖縄の第一交通産業グループは、宗谷バス株式会社と業務請負契約を結んでおり、毎年6月1日から9月末までの4カ月間に、同社のバスガイドを北海道の利尻島と礼文島の両営業所に派遣している。

写真:右端が遥奈さん。ガイドとして同乗していた宗谷バスの前で。
写真:沖縄でのバスガイド時代の遥奈さん。
写真:バスの前で(遥奈さんの)おばあ様と遥奈さん。

そうして色んな経験を積んでいく中で、いつしかこんな気持ちが芽生えたという。

遥奈さん 生まれ育ちが沖縄ということもあり、何か沖縄に関わる仕事をしたいという気持ちはずっとありました。色々な業種に関わらせてもらったうえで、もっと直接的に沖縄に関わることができるにはどうしたらいいのだろうと悩んだ末、自分が起業することが一番じゃないかと思いました。

写真:遥奈さんのおじいさまが制作したシーサーのアロマストーンと遥奈さんの制作したアロマ。
(※現在は販売を一時停止しております。)

そうして沢山の経験の中から調香師、尚且つ自分で会社を立ち上げるという道を選んだ遥奈さん。そんな遥奈さんが「香り」を作るうえで大事にしている事は、“記憶に残る「香り」を創ること”なのだそう。

遥奈さん 旅行に訪れた土地の楽しかった想い出や、大好きな人との思い出など、「その時感じた香り」がただようと記憶ってより鮮明によみがえるんです。わたしのコンセプトでもある“香りは見えないが忘れがたい ”という言葉の通り、その土地にある素材を活かしつつ、想い出に残る香りを創ることで、沢山の方の想いを香りでサポートできたらいいなと思っています。


以前、奥様と想い出の地で買った香水を再現して欲しいというご依頼があり、何度も試行錯誤しながら完成させたことがあった。その際、「とっても懐かしい気持ちでいっぱいです。」と、香りを確かめながら当時の思い出話を嬉しそうに話していたお客様の姿が今でも忘れられないと話す遥奈さん。

「大切な想い出と結びついている大切な香りを私に託してくれて、それを再現するお手伝いが出来る。そんなわたしにとっての最高の褒め言葉は、“いい香り。” なんです。」と、嬉しそうに話してくれた遥奈さん。

「目に見えないものだからこそ、ダイレクトに心に届けることができる。」と話す遥奈さんの作り出す香りは、まさに誰かを想い、誰かに寄り添う、気持ちが伝わってきました。

“香りは見えないが忘れがたい”

その言葉の通り、遥奈さんの紡ぎだす香りと、何処かで再会できた時に、それをどう感じるのか、そしてどのような想い出を一緒に作ることが出来るのか、それが今から楽しみでならない。

首里石鹸 中里ゆきこ

【株式会社いいにおい】
「株式会社いいにおい」は、調香師の山城遥奈さんが、企業や店舗のコンセプトやお客様のイメージを丁寧にヒアリングし、「香り」を通して空間をデザインしている会社です。首里石鹸では、店舗や本社の香りを調香していただいております。

■DATA:〒904-0495沖縄県国頭郡恩納村字谷茶1919-1 OIST Innovation Incubator

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※お仕事のご依頼や商品に関しましては、公式サイトにてご確認ください。

― 取材後記 ―

楽しく取材を受けていただく中で休日のリフレッシュ法をお聞きすると・・・「香りの引き出しはたくさんあったほうが良いと思っているので、県外に旅行にいった際や、県内の商業施設などに足を運んだ際にも、いろんな店舗に置いてある香りを端から嗅いでいったりしています(笑)。他には、近場の植物があるところにいって季節のお花の香りを嗅いでみたりと、とにかく嗅覚に関連することが逆にリラックスにもつながっていたりします。あ、でも、体調を常に維持していないと香りの感じ方が変わったりするため、しっかり休息をとることも大切にしていますよ!」と笑顔で答えてくださいました。

気さくで明るいお人柄でありながら、「香り」に真剣に向き合う遥奈さんの魅力が存分に感じられました。ぜひ皆様も首里石鹸の店舗に足を運ばれた際は、遥奈さんの調香した“香り”を感じてみてくださいね。

首里石鹸 公式YouTubeにて
「晴れ時々、首里」の動画も絶賛配信中です!

弊社のYouTubeチャンネルでは、お馴染みの甲斐ちゃんが遥奈さんにインタビューをさせていただきました!ぜひYoutubeショートも合わせてご視聴いただけますと嬉しいです♪