沖縄ならだれもが一度は聞いたことがある「カジマヤー」。
数え97歳の生年を祝う風習で、カジマヤーを迎えると、人は生まれ変わって子どもに還るという言い伝えがあり、迎えた方は風車を持ち、盛大にお祝いをします。
私の祖母がカジマヤーを迎えたのは、ちょうど3年前。
コロナ渦真っ只中で、毎年心躍らせる太鼓の音色も、街の人々の笑い声も聞こえない、異様な静けさにぽっかりと心に穴が開いたような感覚を今でも覚えています。
「今年はさすがに、、お祝い出来ないよね..。」
ただでさえ祖母に会える機会が減ってしまったから、せめてお祝いはしてあげたいと思っていても、状況が状況だけに中々口に出せずにいました。
そんなある日、伯母から母に電話があり、
「大きくはできないけど、うちでカジマヤーをしたいと思っているの。」と、言われました。
そうして、伯母の呼びかけから、ささやかなお祝いが行われることになり、久しぶりに家族で集まることが出来ました。
数年前に病気を患い、寝たきりの暮らしで、ずいぶんと小さくなった祖母。久しぶりに会ったのに、言葉がみつからない私は、そっと祖母の手を握りました。
すると、祖母が「みーかー、苦労は宝だよ。しっかり生きなさい。」と、笑いながら手を握り返しました。
どんな時でも笑いながら私を抱き寄せて、“大丈夫”と背中をさすってくれた祖母との思い出が蘇り、自然と笑みがこぼれました。
あっという間に会は終わってしまいましたが、美しい夕焼雲が空を流れていくのを眺めながら、娘と歩く道のりに、今日の記憶をいつまでもとどめておけるようにと、何度も大きく息を吸い込みました。
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祖母のカジマヤーに、風車を手に取りカラフルに装飾されたオープンカーに乗ってパレードを行うことはできませんでしたが、あの日の祖母の嬉しそうな眼差しと笑顔は私にとって忘れられない宝物になりました。
周囲との繋がりや家族を想いあう気持ちを思い出させてくれる沖縄の風習の数々を、これからも大切に、そして家族で楽しんでいきたいと思います。
首里石鹸 伊波みか