今年も、あの日がやってきた。
毎年、この時期は忙しくて、お気に入りのお店の生チョコの力を借りたいのに、数日前から「作ってくれるんでしょ?」が始まり、親子で、昔からの私の失敗写真を見ては、笑っている。
今年はなぜか、中1の息子が、男友達とチョコ作りに励み、家族みんなに上等な(沖縄では ”上手にできた” の意味)チョコをくれて、「俺も頑張ったんだから、お母さんも絶対に作って!」とひかない。
当日の朝、猫をハグしながら心を癒していると、その横を、どんよりとした表情で「もう学校に行くから」と、こちらも見ずに通り過ぎようとした息子の横顔。
「あら…にいにのこともハグしちゃおうかしら」
その気もなく言ってみると、まさかの「やってもいいよ」にびっくりした。
猫たちよりも、少しゆっくり背中をトントンすると、フッと顔が明るくなって、道から何度か振り返り、手を振って登校した。
せっかく芽生えたやる気の甲斐もなく、今年も、コント番組の一シーンのように、煙が立ち込め、型を入れ替えて、最初の半分くらいになった、ガトーショコラができた。
二人はまた大笑いして、写真を撮って、満足そうにしている。
得意なことで伝えたいのになぁ。
みんなが寝静まった夜、机を見ると、私が作ったアンモナイトや三葉虫のおりがみの横に、息子が作った「いかの骨」が勝負をかけるように置いてあり、吹き出してしまった。
息子らしさ100%が愛おしく感じて、せっかくなので、心に響いたハートをいくつも折って寝たら、翌朝に大喜びしてくれた。
ご機嫌の登校の後、ふと見ると、蝶々や虫や鳥やランドセルが、置かれていた。
帰ってきた息子に「また増えててびっくりした!」と、今度はお礼に、ふと見た街路樹の葉っぱが、耳の生えたポケモンに見えた写真を見せると、さらに嬉しそう!
喜ぶと思った。手作りチョコよりもね。
最近、夫婦で、一緒に仕事をする機会があって、今回は二人がとても大切にしている方々へのインタビューとあって、意見がぶつかるかと思いきや、絶妙にお互いの良さを活かすことができて、仕上がりを見る度に「いいよねぇ」と笑いあっている。
そんな時間が、何よりも愛と感謝が伝わるなと、やっぱりイベントよりも、日常の時間の積み重ねがいいなと、もっと丁寧に家族の時間を楽しもうと思った。
ライター
首里石鹸 白鳥恵子